これから菫も咲くでしょう

宝塚と、もろもろと

カルトワインを見たよ

宙組東京建物brillia hall公演「カルト・ワイン」を観てきました。

すっごく!面白かった…!!!

この作品を観れて、熱狂できていることが本当に幸せです。

忘れたくないので、思いのたけを記しておくことにしました。

ネタバレまくりです。

 

カルトワインについて

この舞台の疾走感が大好きです!!

取り扱っている題材や起こっていることを取り出していくとシリアスなことばかりなのですが、でも舞台自体はコメディよりの、ハイテンションミュージカル!なのがすごく癖になってしまう。

癖になると言えば、色んな出来事が詰め込まれているのに、説明台詞とかは必要最低限にそぎ落とされて、とにかくスピーディーに話が進んでいくところも、すごく、癖になる。見逃してはならない、聞き逃してはいけない、という緊張感につながっていた気がします。それをけん引する演者さんたちの集中力がものすごかった。まるで自分がいなくなるような、舞台の一部になるような、没頭する観劇体験でした。だからこそ「も、もう一回…!」と思ってしまう。

そういう、楽しいけれどヒリヒリする、相反するものがギュウギュウに詰まっている舞台だなぁと思うのです。あとラスト!あのラストがものすごく好きです。

ワインの価値は誰が決めるのか。では人は?人の価値は誰が、どうやって決めるのか?

決められた価値は変えれないのか?

主人公の走り抜けた先にある答えが、まさにちょっぴりビターで、でもつい笑ってしまう爽快感!本当に大好きです!

 

シエロについて

桜木さんのシエロ、なんか、なんかさ、罪深すぎない!?と半ギレになるくらい好きです。あの私、長年「誰のものにもならない」萌を抱えて生きてきてるので…。

飄々として、軽やかで、何も持たずに生きてきた男の子。

でも心はあるよ、心はいつだってあった。誰にも見せずに抱えてきた、そういう男の子を、好きにならずにいられないでしょう!?!?!?何なのもう!!!!ありがとうございます!!!!泣きそう!!!!!(情緒が)

栗田先生の桜木さんに対する「笑顔で千の感情を表現できるのではないか」の評に膝を打ちまくってしまったし、それを「詐欺師に必要な才能」としたのに感嘆してしまうんですよね。

そしてあのパッとした笑顔を向けられたとき、確かに心を揺らさずにいられない、さ、才能あふれる~~~~~!!

でも、シエロの根底にあるのは「覚悟が決められなかった自分」なのかなぁと思うのですよね。

何だってすると決めたはずなのに、できなかった自分。だったらマラスに入ること自体拒否すればよかったのにできなかった自分。結局「おっさん」にアメリカを見せることができなかった自分。

今度こその覚悟がチャポさんのところに行くことで、そこから抜けることだったのかなと。

最後の覚悟こそ彼がやっとできたことで、だからこそすごく爽快感があるのかなぁとも思うのです。あぁ、本当に好きだな…!

あと、シエロにとって「フリオとモニカが幸せになること」が最優先なのが、「ホントにお前は勝手な奴だよ!!」ってなるんですよならざるを得んでしょ…。

あの小切手を渡すとこの「ん」がズルいんですよね…何でもないことのように渡してきてるけどお前、お前さぁ…!!ってフリオの気持ちになってしまう。

フリオやモニカ、ディエゴさんにとってのシエロの価値は「シエロであること」ただそれだけなのに、シエロ自身はそうは思えない、フリオにもずっと動かせないものであったのが辛いなぁと思うのですよね。そのくせ、「でもお前らこれ必要なんだろ?」って何もかも差し出してくる。勝手で、ズルい。ひどい人だ。でもどうしたって憎めない。罪深い…!!

シエロが最終的にどんな夢を見るのか、それは具体的には示されていないのですけど、私は、南の島でやたらと飯と酒の美味いレストランが繁盛するの、すごくキラキラした夢だと思うのですけども。どうなんですかね。でもそういう夢があってもいいじゃない…!と思えるのがとても良いなぁと思うのです。カミロじゃない顔で、笑っててほしいな。罪深い人だよ…!!(情緒が)

 

フリオについて

もえこちゃん(瑠風さん)、フラれるの似合うね…。ってなってしまった。

二幕でフリオがアマンダの返事を「待ってる」ところで「あっ…」ってなって、試飲会にボストンバッグ持ってきちゃったとこで「ああっ…」ってなって、酔っぱらってからじゃないとシエロのこと言えなかったのに「あああああっ…!」ってなりましたよね。

いや!幸せになってほしい!!ホントに!!心からそう思ってる!!

でもフラれるのめちゃくちゃ似合うね…。何かしらこの気持ち。

フリオは、シエロに振り回されてるって、自分も周りも思っている気がするのですが、フリオの方が頑固で、最終的にシエロに決断を迫るのはフリオなのが面白いなぁと思うのです。

ホンジュラスにいた頃のシエロにとって、フリオとその家族は、帰り道に小さな家から見える明かりのようなものだったのかなって思うのです。他人の家で、自分のものではない、でも微かに心が温かくなるような明かり。

でもフリオの「アメリカに行こう」って言葉は、もっとずっと強い光だったんじゃないかと思うのですよ。自分の中に初めて灯った希望という光。

シエロにとってのフリオは、そういうものを見せてくれた人なのだけど、絶対一生言わないだろうし、フリオも一生気づかないんだろうなってとこが猛烈に好きです。てゆか、フリオはシエロにお金のこととかアマンダのこととか、いろいろ罪悪感を持ってたりもあるのでしょうけど、シエロは全然気にしてないのって、「もう貰ったから」なんだろうなって思うのですよね。でもフリオにとってはそんなの全然、渡したうちにも入らないしむしろ助けてもらってるしでホントにホントにお前は勝手な奴だよーーーーー!!!ってそりゃなるよ!!シエロってやつはズルい人だよ…!

しかし凸凹しながらどこまでも対等な二人がめちゃくちゃときめきますね…。ずっと二人でいてくれ…。

 

アマンダ、ミラさん、モニカについて

カルトワインに出てくる女性陣、皆さん背筋がピンと伸びてる感じがしてとても好きです。

まずモニカちゃんが「天使か」って感じなのですけども、天使でしたね…。

しかしシエロとフリオにとって、モニカちゃんが「絶対に守らなければならない唯一」になってしまったことを、モニカちゃん自身はどう思っていたのかなぁとちょっと気になるところです。

いえ、私が「シエロみたいな人がそばにいたらそんなの…恋に落ちちゃうじゃん!!」信者であるだけなのかもしれませんが。でも、でもあんなの…恋に落ちちゃうじゃん!?

だからこそ二幕の「10年」って年月の飛び方が上手いなぁって思ったのですよね。少女から女性になる人にとっての10年と、もうすでに女性だった人にとっての10年ってやっぱり違うと思うので。

別の場所にいる人、忘れられなかった人、思い出してしまった人。それぞれに横たわる10年の違いが面白いなぁと。

アマンダちゃんはさ、シエロとフリオ、二人と出会ったタイミングが悪かったよなぁ…!と思ってしまいます。二人が「少年」のうちに出会って、そこから道が外れて一気に大人になったもう一人に再会してしまった。わっと揺れてしまうの、無理ないと思うのですよ。

てゆうかシエロがなんかもうズルいじゃないですか!!なんかもう!!!アマンダに対して、「可愛い先生」とかいうくせに、ポンと置くような、そういう口調なの本当にズルいと思うんですよ!!

シエロは、アマンダに対して「あげられるものは何にもないよ」って示してるようなところがズルいなって思うんですよね。ごめんねって、最初っから謝ってるみたいで。そんなの、そうじゃないんだよ~~~~~!!!ただ、私が、あなたに何か、あげたいんだよ…!!ってなっちゃうじゃん!!ズルいんだよ~~~~~~!!!

あと、フリオにあったのが料理人の才能で、シエロにあったのがソムリエの才能なのも、残酷だなぁと思うのです。シエロの才能こそ、ホンジュラスにいた時では芽生えることすらない才能だった。それを見出してしまったこと自体に、彼女は魅入られてしまったんじゃないかなぁと。

シエロを忘れられなかったアマンダ、カミロに心揺れたアマンダ、彼女が最後に選んだものが「ソムリエとしての自分」であることが格好いいなぁって思うのです。

シエロがアマンダをどう思っていたのかが見えるようで見えないのがいいなぁって思うのですよね。だってもう知っていたから。先に、フリオの好きな人って知っていたから。その切なさがまた良いなって思います。フリオはフリオで「それだけじゃない」って言うのもまた好きです。ところであの刑務所の中でようやく自分になれたシエロの見せる笑顔が泣きたくなるほど好きです…!

そしてミラさん!!まさに狂乱の真ん中に立つ女だぜ…!!ってなるんですけども!!

ミラさんは、カミロという青年に酔わされた自分をどう思っていたのだろうってつい考えてしまいます。悔しかったと思うし、してやられたとも思うし。明るみに出たら切り捨てる、それは決まっていたことだと思うのですが、でも、手に入れたい、彼こそ手に入れたい、そういう気持ちもあったんじゃないかなぁと。たとえラベルが違っていても。ラベルが違うことを、知っているのに。

そう思ったのはアマンダがシエロを問い詰めているところを見たミラさんから、パッと嫉妬が見えた気がしたのです。パッと、赤ワインがまかれたような濃密な嫉妬。くるっていく歯車みたいでゾクゾクしました。これからもっと濃密になるんだろうな…!楽しみすぎる!!

 

チャポさんたち男性陣について

シエロくんさぁ…年上の男に、弱くない???

思わずそう言ってしまうほどにチャポさんとディエゴさんに影響されすぎてるんですよあなた!!うう、最高です!!

ディエゴさんは「親代わり」なことは示されているけれども、どうしてシエロに親がいないのかは語られてないわけですが、事情があったようにも見えるし、ただ、捨てられたようにも見えるのが、シエロ自身の親というものへの思いの揺らぎのようでもあって、とても好きです。

シエロは、カミロのときでも子供っぽい笑顔を見せるときもあるのだけど、言い方まで子供になるのはフリオやディエゴさんの前だけだと思うのですよ。うう…罪深い!!

ディエゴさんが「お前が本当にやりたいことなのか?」とシエロに聞く場面、大好きなのですが、あの問いかけ自体はむしろフリオにこそ深く刺さったのかなとも思うのです。シエロが本当にやりたいこと、まだ見つけられないもの、見つけたと嘯くもの、俺が、見定めてやろうと思ったんじゃないかなと。だってシエロはフリオのやりたいことをずっと知っていたのだからと。

ディエゴさんがいなくなってからも3人の暮らしは続いていくの、歪で、残酷で、生きてるなぁって思うのですけど、でも忘れたことなんてないってシエロが示すのが、お前は…そういうやつだよ!!ってまた逆切れしてしまう…好きです…。

 

チャポさん!!!!好きです!!!!!結婚してください!!!!!

思わず叫んでしまう格好良さですよ…あーちゃんの悪い男、最高です!!

カミロに「演技のし過ぎで勘違いしてんじゃねーか?」っていうところ、怖すぎたのですが。逆らっちゃいけない人だと瞬時にわかってしまうあの迫力よ…それまで何となく愛すべきイケオジみたいな顔してたのに、ズルい…ズルいです!!ってなります。

チャポさんはシエロのこと、「毛色の違った飼い犬」くらいにしか思ってないんだろうなとしみじみ感じるのですが、「でも使えるんだよなこの犬」くらいの思い入れは見え隠れしてて、そこになんかグギギと心がうめいてしまいますね…好きです…。

わんたくん、一幕の兄貴とインテリヤクザ、全然違う柄の悪さでときめきました…!てか兄貴が!!兄貴が怖すぎるのだけど!!

あの兄貴が怖くないとシエロが「抜けられない」ことが分からないから怖くて大正解なのですが、でも、怖いよ!!最高です!!

そして二幕ではちょっと残念なワイン愛好家でそちらも全然違ってて、最高です!!わんたくん大好きです!!あの婦警さんへの対応、感じが悪すぎる!!何あのハンカチ使い!!好き!!いたるところにわんたくん、最高でした!!

いたるところに、と言えばすっしーさんもですが。すっしーさんの、成功したからこそ、成功したのに、の部分がすごくよかったです。パパ、これからどうするのかしら…。きっと、娘たちが決めたことを、受け入れてくれるのだろうなぁと。そういうパパでした。素敵だ!

なっつさんの刑事さんもよかったな。声が!!格好良すぎる!!そしておそらく情報提供者のフリオから聞いた事情でシエロに微かな同情を見せるのも、正義の人だなぁと思うのです。だからこそ、その後のシエロの開き直りにも似た「何が価値なのか」という問いかけが染みるなぁと。

風色くんのオークショニアも格好良かったなぁ!物語の始まり、狂乱の始まりがあんなにスマートに始まるのが、何かますます怖い気がして。スムーズに、いつの間にやら、狂っていく。その場にふさわしい案内人そのもの。

真白くんミゲルのチャーミングさよ、永遠なれ!!と思ってしまいますね。チャポさん大好きすぎる。可愛い。でも暴力に一切躊躇がないの、治安が悪すぎる!!好きです!!

とにかく、宙組の男役さんたち、みんな声がいい!!!すげぇ!!!ってなりました。あと皆さん柄シャツお似合いですねと。はー、今後も楽しみしかない!!

 

桜木さんのオタクによるあれこれ

・シエロもカミロもあきらめが早いというか切り替えが早いとこがなんかうっかり切なくなる。殴られるのことも抱くことも、ちょっと視線を落としただけで受け入れてしまうの、処世術なんだろうけど、切ない。それはそれとして自分が殴られることには何の感慨も抱かないのに、フリオのことは心配するの、お前さーーーーーー!!!ってなりますね。はぁ、好き。

・フィナーレ、釘付けで見たはずなのに記憶が飛んでる。辛い。辛かったことは覚えてるのに。辛い。少しも早く音源だけでもくれ…。

・一幕のシエロのあのぺらっぺらな体つきも、二幕で大人の男性になっているのもあまりに好きすぎるし魔法かな?ってなります。タトゥー、あまりに、罪深い…

・桜木さんももえこちゃんも、感情を振り絞るような声を出すのがあまりにうまい。うますぎる。そこにあーちゃんの「支配」を感じさせる声が混ざるとどうしていいのかわからなくなりますね…あと声と言えばさくらちゃんもすごく素敵…音源…。

 

美味しいワインと過ごした時間はいつだって格別なのだと、そんなことを思ったり。

熱狂のごとくはまってしまった、この作品がこのカンパニーで見れてただただ幸せです。