これから菫も咲くでしょう

宝塚と、もろもろと

2016年花組大劇場公演「ミーアンドマイガール」を観ました

 A,B両パターン観れて本当によかった。

 

 ミーマイはもともと大好きな演目なのですが、明日海さんのビルと花乃さんのサリーが本当に可愛くって、ますます大好きになったのです。二人がお互いがお互いを大切に思っていて、パズルのピースがぴったりと嵌っているようなお似合いでしかない二人。

 だからこそ、一幕のホントに冒頭の場面は、この二人は二人で完結してるんだなぁという感じがしたのです。君がいればいい。あなたがいればいい。

 それは素敵なことではあるけれど、実際にできるかどうかはまた別の話なわけで。花組さんのこの前の公演はアーネストでしたが、そこでもそういえば言われてましたね。貴族だけでは生きられない。二人だけでいれるほど、世界は狭くない。

 望まない形であろうともビルの世界は広がってしまったことに、多分マリアおばさまと同じくらい早くサリーは気づいてしまったんだろうな、と。

 

 一幕のパブの場面で、サリーがジョン卿に「(ビルは)ここを好きになってきてるんだ」って言うところが切ない。生きていくうちに好きなもの、大事なものがどんどん増える、ビルはそういう人だってサリーだけは知ってる。ビルは二幕で「僕はサリー以外の人間を愛したことはない」って言うんですよね。ビルも知らないビルのことをサリーだけは知ってる。貴方は人を愛せるよ。いろんな人を大事にできるよ。あたしは知ってんだ!

 花乃さんのサリーは賢くって人がよくって、何か、損ばっかしてそうな子だなぁと思ったのです。あたしはいいよ、って人に譲ってばっかりの。いいよいいよって自分の手の中にあった幸運を人にあげたり、落としちゃったりしてばっかりのサリーの手に、「おめー、こんなんあったぜ」って別の幸運をひょいっと投げ込んでくれていたのがビルだったのかなと。だからこそサリーはビルはあたしじゃなくても大丈夫、って思ったのかしら。でもそうじゃあなかったのは、ビルが、何かを与えることで喜びを感じるのは、サリーに対してだけだったのかなと。ビルとサリーがお互いがお互いを思いあって、だからこそすれ違うのが切なくて、なので最後の再会がホント「よ、よがっだねぇぇぇぇぇぇぇ!!」って泣けるんですよ…。明日海さんと花乃さん、二人のやり取りがキュートで、不器用で、優しくて。本当に好きでした。

 

 役替わりもどちらも楽しかったー!特に印象的なのがマリアおばさまとパーチェスターさんでした。全然違う!

 Aパターンのマリアは何だか少女めいた雰囲気があって、確かにこの人を傷つけたりできなくなるよなぁ、という説得力があったし、Bパターンではビシッ!バシッ!の迫力ですごいメリハリがついて楽しかったのです。どちらのマリアも「守りたいものがある」ことは共通していて、だからこそビルも無下にできないし、段々「ここ」も大事になっていったんだろうな、と。

 あと、マリアおばさまの「あの子が生まれながらに持っている権利です」っていう台詞がとても好きなのですけど、ああいうことを自然に言える人が屋敷にいたから、サリーはランベスに帰る決意をするんだろうなぁって思ったのです。

 

 パーチェスターさんはどっちも変な人で、とっても素敵でした。鳳さんのパーチェスターさんは変な人だけど仕事はそれなりにできそうな気がするんですが、柚香さんのパーチェスター、若い分かしら?仕事できなそーだな!!って思いました。そんなところが良かったよ!

 鳳さんのパーチェスターは、その人柄のあったかさからビルと仲良くなってしまったのかなって思ったのですが、柚香さんの場合はビルとサリー、二人と歳が近くてうっかり仲良くなっちゃったのかなと。サリーが屋敷から出ていくべきだと、マリアに諭される場面で、柚香さんパーチェスターが「そんなっ!駄目だよ!!」って感じで目がウルウルしちゃってたのが、隙だらけで大変可愛かったです。まぁ、マリアに従うんだけどさ結局。

 サリーが屋敷から出る場面、と言えば、天真さん演じる執事さんもすっごく素敵でした…!始めは執事然とした表情を崩さなかったのが、「お車の用意が整いました」でサリーが顎を上げて、拳を握り締めて歩いていくのを見て、一瞬痛ましそうに眉を歪めていたのですよね。あの場面、悪い人が誰もいないことにものすごく泣けてきます。

 

 どの役も人間味が溢れていてとっても素敵だったなぁと。ジャッキーはどちらもゴージャス美女で、ジェラルドは愛すべき坊ちゃんで。あと、ジョン卿な。あれな。罪深いくらいのイケメン…。そんな!!私!!選べない!!と混乱しました。

 ジョン卿と言えば、サリーが「一度ハートを失ったら」を歌ったとき、サリーのハートをビルが持っているように、マリアのハートはジョン卿が持っていたことに、ジョン卿自身があの時気づいたんじゃないかなと思えたんですよね。だから返しに行こう。そうしてまた貰えるだろうか。もしくは、自分の、ハートをあなたにあげられたら。そうだったらどんなに素敵だろうって、そう思える、心の動きがいつだって優しい、そんなミーアンドマイガールが見れてとっても楽しかったです。観れてよかった!

 

 この公演の大千秋楽の翌日、花乃まりあさんが退団発表をされました。とてもさみしいです。花乃さんは、舞台で観るたびにどんどん好きになる、そうさせてくれる娘役さんでした。だからとてもさみしいし、もっと、拍手を送ればよかった。何回も、何度でも拍手を送ればよかった。どんな声も掻き消えるくらいの拍手を私が送れたらよかった。

 まだ唇を噛みしめるような気持なのですが、でも、限られた期間になってしまった今、せめて精一杯、できる限りの拍手を花乃さんに送りたいと思っています。

 花乃ちゃん、素敵な舞台をありがとう。

 あなたの幸福を、それこそ果物売りのボブみたいに祈ってる。