これから菫も咲くでしょう

宝塚と、もろもろと

17年宙組公演王妃の館を観ました。

もう千秋楽もとっくに終わっていますがね!!

それでも自分なりに感じたことを書き留めておきたいなと。私はこの公演、とっても好きでした。ちなみにいまだに原作は読んでいません。

 

ムラの初日付近に観た時は愛月さん(愛ちゃん)の金沢さんや、蒼羽さん(りくくん)のクレヨンちゃんと言った濃い面々がが笑いをかっさらっているように感じたのですが、後半に行くにつれて朝夏さん(まぁさま)や実咲さん(みりおん)のやり取りに笑いが起こるようになってて、観るたびに新鮮でした。ちょっとした言い方の違いや、間の取り方でこんなに違うんだ!と。毎回わくわくしながら観ておりました。

そして毎回泣いた。見事に泣いた。一樹さん演ずる岩波さんがあたたかくて、でも切なくて。人生なんて思い通りにならないことばかり起きるのだけども、それでも笑えと。笑いながら生きてほしいという願いが切なくて、あたたかくて、毎度泣いてしまいました。はー、好きです。

 

この宝塚版の王妃の館を観ていると、「どんな人にも傷つく言葉がある」ってことを考えました。すごいお金持ちも、(元)売れっ子小説家も、シャカリキツアーガイドでも、いつも明るくふるまっているおねえさんでも。

悩みはあるよ。傷つくんだよ。そういう言葉があるよ。あなたは使ってない?って問われているようで。

だから観終わった後にいつも「自分はどこで笑ったかな」って考えてました。言葉で笑ったのかな。仕草で笑ったのかな。私は誰か、知らない誰か、出会ってない誰かを傷つけるところで笑ってなかったかなと。

そういうちくちくした感じが妙に癖になって、ついつい何度も観てしまいましたし、何より、私はこの舞台に出てくる人たちが優しくて、だから何度も観たくなっていたのかなと。

クレヨンちゃんを「オカマ」って言うのは、「人の痛みが分からなかった」北白川先生と、猪突猛進、自分の気持ちで突っ走って付き合ってない人をパリ旅行に誘う近藤さんだけなのですよね。それって、結構すごいんじゃないかと思ったのです。当たり前に「楽しそうな人たちね~」でするりと受け止められる。

その二人以外は、クレヨンちゃん自身が使いますね。クレヨンちゃんが「あたしなんてオカマよ!」って言うとこ、その言葉はクレヨンちゃんが自分自身を傷つけるものなのに、誰かのために、それを言ってあげるの本当になんといい子なのかと思うのですよ。だからこそ、誰かのために「笑われる」ことをしたクレヨンちゃんが、「俺のために笑え」って言われるのホント、ホント、よかったね…!って涙とともになるわけで。北白川先生も近藤さんも、気づいて、変われる。そこが私は優しいなって思ったのです。だから不愉快にはならなかったのかなと。 

この場面、いろんな人たちが細かく演技してて大好きなのですが、まぁ私はファンなんで桜木さん演ずる戸川君を見ますよ(開き直った)。クレヨンちゃんが言いたくないけど、言おう!ってなっている後ろで、戸川君が心配そうにしているのがすごく好きだったのです。それがあったから、最後に近藤さんとクレヨンちゃんがイチャイチャしているとこに戸川君がニコニコ走り寄っていくのかなと。戸川、クレヨンちゃんに、フォローしてもらってたもんな…。戸川君がただ普通に「クレヨン様っていい人ですね…!!」ってなってるとこが私はとても好きでした。優しいと思うんですよ。当たり前なんだけど、当たり前なとこが。

あ、ついでに戸川君ポイントとしてはみりおんちゃん演ずる桜井玲子さんが「お客様に対して恥ずかしいことをしました」って告白するところ、あの時戸川君が玲子さんを庇おうとするように顔を上げて、でもお客様の信頼を裏切ったことは本当で、でも、って苦悩しているのがとても好きでした…。戸川君、いい人なんだよな…あんまり役にたってないけど…その辺ホント戸川だよ…好き…って…毎回なってました。

 

人にはみんな悩みがある、その大きさは誰にも測れないし、どんな悩みだって本人の辛さは変わらないと思うのです。「もっとつらい人がいる」って、私の辛さの軽減に何にもならなくない…?って思っていたので、金沢さんとミチルちゃん(星風まどかちゃん)のやり取りもとても好きでした。

ミチルちゃんの「見た目にちょっと嘘をつく」って台詞がいいなぁって思ったのです。ちょっと嘘をついてても、パパのこと好きよって。見た目のちょっとした嘘で、それで自分のことをちょっと好きになるなら、自信になるなら、いいじゃないって思うんですよ。そういう受け入れ方をするミチルちゃんが素敵だなって。

ミチルちゃん、純矢さん演ずる早見さんに「オバサン!」って言うとこがあるのですけど、あれってミチルちゃんもちくちくしてたのかなって思ったのです。星風さんのソーキュートさも相まって、金沢さんとミチルちゃん、かなり歳の差カップルに見た目からしてなっていて。「全てを知りたい、パパのこと」なのに見せてくれないのは、ミチルが子供に見えるからなの?ってちくちくしていたのかなって思えたのです。ミチル可愛いよミチル。最終的に問題を解決したのは北白川先生じゃなくて金沢さん(のマネー)で、その金沢さんを幸せにしたのはミチルちゃんなの格好いいなぁ。お幸せに!なお二人でした。

あ、早見さんも素敵だった…!早見さん、恋は諦めてないけど一番欲しいものじゃない感じがとてもいいなって。ピエール(和希そらくん)とくっついてほしいなぁって思うのですが、ピエールもいい男だから早見さんが今一番欲しいものが何かわかってると思うのだけどな。だから、ピエールが東京に職を見つけて「はーい、リツ子!」って現れるのも良いし、定年まで勤めあげた早見さんがフランスに飛んで「お待たせしたわねピエール!」って言うのも良いです。可愛いお二人だなぁ。とても好き!

忘れちゃいけない太陽王真風さんなのですが、結構ひどいんだけども憎めないのがなんかずるいですよね…あと、ムノンと一緒に可愛すぎた。あれはずるかった。ディアナとプティ・ルイのくだりはいつもぐっときてしまいました。最後の大団円、ホッとして追われるのがとてもよかったなと。

 

言葉の使い方で色々と言われていた印象の公演だったのですが、私は観れてよかったと思うし、とても好きでした。みんな幸せ、大団円!で終われるのも良かったなぁと。

 

この公演はみりおんちゃんの退団公演だったのですが。最後の最後、千秋楽でまぁさまに肩を抱かれたみりおんちゃんがはじけるような笑顔で舞台を去っていくのが観れて、私はとっても幸せでした。

これからの旅路が、どうか幸せいっぱいのものでありますように。